io.jsのTechnical Committeeに推薦されました
1. はじめに
「こんな私がXXXに!?」の宣伝文句ではありませんが、こんな私がio.jsプロジェクトのTechnical Commitee(TC)に推薦されました。
Nominating Shigeki Ohtsu @shigeki to the TC
TC meetingは毎週木曜の早朝朝5時、Googleハングアウトで行います。会議の様子はライブ配信され、youtubeで録画公開されてます。議事録も随時公開されています。https://github.com/iojs/io.js/tree/master/doc/tc-meetings
コミュニケーションは当然全部英語。大変です。昨日の早朝に初めて参加しましたが、やっぱり議論に全然ついていけません(涙)。まだまだ修行が足りません。
私は、2月頭から io.jsの Collaboratorとしてプロジェクトに参加してきました。もっぱら開発に集中するためガバナンスやポリシー等の議論などほとんど追っていなかったので、今回慌てて io.js プロジェクト運用などのドキュメントを見直すはめに…
そこで今回、自分自身の復習を兼ねて、現状の io.js プロジェクトがどう運営されているか、この2か月半を振り返りながら書いてみたいと思います。
このエントリーを通じて、これまであまり io.js についてなじみがなかった方も io.js がどういうプロジェクトか知っていただければ幸いです。ちなみに現在交渉中である Joyent Node との統合話は今回のエントリーでは触れないことにします。
2. io.jsの プロジェクト運営
本日時点での io.jsプロジェクトの概要を図にしてみました。github organizationに280アカウント登録されています。
次に、それぞれの役割について記述します。
2.1 Technical Committee
io.js プロジェクトのハイレベルの意思決定を行う機関です。現在9名で構成されています。そのうち6〜7人がJoyent Nodeの現/旧コアメンバー経験者です。他にもV8やJS関連でGoogleの Domenic Denicola さんもオブザーバーとしてTC meetingに参加されています。
現在 Rod と mscdex と私がオブザーバー身分で、最終的には12名になる予定です。TCの人数は、9〜12名程度を想定してますが、明確な定員や任期は決められていません。ですが、これ以上になると集まって合意を取るのが大変だなと話も出てました。またTCは特定企業の色をなくすため、同一組織(正確には同一雇用者)のメンバーの割合を1/3以下にするという規定を設けています。超えちゃった場合は誰かが辞めることになるので、これからは転職先には気を付けないといけませんw。
TCの役割は、以下の通りです。
- 技術的な方針決定
- 影響度の大きい変更や意見が分かれるような修正等はTCで議論され、最終的に方針決定されます。
- プロジェクトの統制やプロセス管理
- 今回改めて読み返したところです。https://github.com/iojs/io.js/blob/master/GOVERNANCE.md プロジェクトメンバーの役割や手続き等を決めます。
- プロジェクトへの貢献ポリシーの策定
- このポリシーは、プロジェクトメンバーだけでなく一般の方々からの io.jsの開発に協力していただくための規定です。 https://github.com/iojs/io.js/blob/master/CONTRIBUTING.md Nodeの頃からPRを出していたので、これまでほとんど目を通していませんでした。 コミットログの書き方やPRの出し方だけでなく、DCO (Developer’s Certificate of Origin:原作者証明書)やCode of Conduct(行動規範)も記載されていたとは、知りませんでした。
- Githubのリポジトリの管理
- これは organization やレポジトリの管理の事じゃないかと思います。実際TCメンバーになるとどういう権限が与えられるかまで知りません。当然事前にTC meetingでの合意が必要でしょうが。
- Collaboratorの人選、管理
- Collaborator(後述)を推薦して、承認します。Joyent Nodeでは少数精鋭のコアチームでしたが、io.js は、比較的緩いというか幅広く多くの開発者を Collaborator として協力してもらう方針です。自薦・他薦からTCのメンバーがCollaboratorを推薦し、TC meetingで承認します。状況を見てある程度バッチ的に行っています。資格喪失の条件は今のところ見当たらないですね。人数が多くなって活動してない人が増えたりするとその辺整備されるのかもしれません。
2.2 Collaborator
日常的に github で作業を行います。TCメンバーも含み現在30名が登録されており、日本からは古川さんと私が参加しています。
Collaboratorになると github レポジトリのアクセス権や issue/pull requestの管理権限がもらえます。TC meetingで承認されると最初にGoogleハングアウトでガイダンスを受けます。もっともガイダンスと言っても1時間ほどCONTRIBUTINGのやり方を聞くぐらいで、あれこれ細かく言われるわけではありません。
https://github.com/iojs/io.js/blob/master/COLLABORATOR_GUIDE.md
Collaboratorでも自分のPRをマージするには、必ず他のCollaboratorのレビューを受けることが必須です。またCollaborator間で意見の相違がありまとまらなかったら、TCに最終的な判断を仰ぎます。
通常のエンジニアとして技術的な良心?を持って対応をしていけばほとんど大丈夫です。ただ将来規模が大きくなりすぎて収集つかなくなったらどうなるのかなとちょっと心配になったりもします。そうなる前にまた別のプロセスができるんじゃないかと思いますが。
繰り返しますが、io.js のCollaboratorは比較的広く門戸が開かれています。英語でのやり取りは必須ですが、やる気のある方はどしどしgithubでio.jsの開発に参加してください。
2.3 Working Group
io.jsでは、特定の活動を行うためのワーキンググループ(WG)を設けています。現在9つのWGが設立され、活動を開始しています。
https://github.com/iojs/io.js/blob/master/WORKING_GROUPS.md
私はどこにも所属しておらず各WGの詳細を把握していないのですが、機会があれば参加してみたいと思います。
驚くのは、i18nのWGに34もの言語コミュニティが設立されていることです。各国語への io.js 公開情報の翻訳やtwitterアカウントでの活動など、各国のコミュニティの中心としての活動が期待されています。
3. 中から見たio.js
2月の頭から io.jsの Collaboratorとして主にTLS/crypt周り(OpenSSLのバージョンアップ等)の開発を行いました。ここではこれまでを少し振り返って気づいたことを書いてみます。
3.1 本当に速い開発速度
現在の最新リリースは、 iojs-v1.8.1 です。 レポジトリには24のリリースタグが付いていますが、いくつか重複やスキップなどあり io.js-1.0.0 リリース以降わずか約3か月で約20回ほどのリリースが行われた換算です。
ほぼ毎日コミットがマージされタイムゾーン関係なく24時間開発が回っているような印象を受けます。自分がプルリクエストを出すと即レビューされ、レビューコメントを書くそばから修正や返答が返ってきます。まるで世界の超一流エンジニアとgithub経由してペアプロしている感覚。まぁほんと普通のエンジニアからスーパーサイヤ人に変身しないとそのスピードに付いていけない気分ですw
近々では V8 Ver42の導入に伴う iojs-2.0 の開発・リリースが予定されています。io.js 初のメジャーバージョンアップです。
3.2 Semver重視、安定性大事、性能も大切
以前の Node は、安定版リリースに伴い大幅な変更が入り、ユーザのマイグレーションコストが高いと批判を受けていました。それ受け io.js は、互換性の客観的な指標として Semver を非常に重視して短サイクルのリリースを行っています。ソフトウェアが進化する以上変更は避けられませんが、変更指標を厳格に適応して、できるだけユーザがバージョンアップの判断を明確にできるようにするのが狙いです。
先週私が openssl-1.0.2aへバージョンアップを行いましたが、iojs-1.8.0をリリースした直後、opensslのABI非互換であることを前提としてネィティブアドオンの動作を非互換にする修正をリリース時に入れたことが判明しました。本来なら iojs-2.0 にメジャーバージョンを上げる修正となったので、週末の土曜日にどう対応するかかんかんがくがくの大議論が発生しました。結局私がopensslのABI互換性を確認し、なんとか事なき得ましたが io.js が Semver を重視する一つのエピソードでした。
安定性や性能についても重視されています。PRに合わせてCIでビルド・テストを行うようにし、毎回800を超えるテストスクリプトのジョブの完了を確認しています。サーバの過負荷やタイミングで失敗するテストもまだありますが、この数週間でCIとテスト環境は大きく改善されています。まだまだ十分ではありませんが、確実に安定性は向上しつつあると感じています。
3.3 幅広いアーキテクチャサポート
現在 io.jsがサポートする cpu は arm, arm64, ia32, mips, mipsel, x32, x64 の7種類、OSは win, mac, solaris, freebsd, openbsd, linux, androidの7種です。全ての cpu x OS の組み合わせ、49通りが全部動作するわけではありませんが、V8がサポートするアーキテクチャ上はできるだけサポートする方向になっています。
CIでは、このうち22種類のアーキテクチャでビルドとテストを行っています。
https://jenkins-iojs.nodesource.com/job/iojs+any-pr+multi/
特に arm 関連は、ビルドもテストも時間がかかって大変ですが、リリース時は armv7l用のビルドバイナリーを配布して、非力なマシンでユーザがわざわざビルドしなくても使えるよう配慮しています。armv8もCI環境用のサーバの寄付を受け、先日全てのテストが通るようになりました。これだけ幅広くアーキテクチャをサポートするのは開発者として本当に大変なことですが、できるだけいろんな環境で io.js を使ってもらいたいの一心で作業しています。こんなところで io.js が使われるようになったとの報告も待っていますのでお願いします。
以上いろいろ書きましたが、これまで以上に io.js が身近になるよう取り組みたいと思っています。できるだけ皆さんのフィードバックやご協力をお願いします。